ロシア最高裁、人権団体の解散を命令 旧共産党による被害者追悼の団体サラ・レインズフォード、BBCモスクワ特派員
ロシア最高裁は28日、旧ソ連共産党に抑圧された被害者を追悼し記憶するため創設された、ロシアの人権団体「メモリアル」の解散を命じた。
「メモリアル」はソヴィエト連邦時代に暗殺、投獄、迫害されるなどした何百万人もの無実の人の記録を回復するため、活動していた。
ロシア当局は「メモリアル」が外国から資金提供を受けていることを理由に、2016年に同団体を「外国のエージェント(代理人)」に指定している。
最高裁は今回、「メモリアル」がソーシャルメディアの複数投稿に自分たちのその指定を明記しなかったことが法律違反だとして、解散を命じた。
法廷で検察官は「メモリアル」が「公衆への脅威」だと追及。ソ連時代の「栄光ある過去」を強調するのではなく、ソ連による犯罪に世間の注目を集めるため、西側の資金提供を受けていると非難した。
1989年に創設された「メモリアル」は、ソ連が世界と自分自身に対して開いていく作業の象徴として、ソ連が自らの暗い過去を点検していくための組織だった。この「メモリアル」が閉鎖されることは、ウラジーミル・プーチン大統領の指揮下でロシアがいかに、内向きになったかを赤裸々に示す。プーチン政権のロシアは、自らへの批判を、過去の歴史への批判さえ、敵対的行為として見なしている。
■「国の健康」
最高裁判決が読み上げられると、法廷内では「恥を知れ!」という声が相次いで響いた。
判決はさらに、現代のロシアでいかに人権活動家らへの抑圧が増加しているかも浮き彫りにする。「メモリアル」の人権担当部門によると政治犯はすでに400人を超え、独自路線を歩む団体やマスコミは当局に「外国の代理人」とブラックリスト入りさせられることが増えている。
法廷では、「メモリアル」の弁護人たちが、同団体の活動は「国の健康」のためになるものだと主張。「メモリアル」はロシアの友人であって敵ではなく、その解散を求める訴えはまるで「オーウェル的」でばかげていると強調した。
同団体がオンライン投稿で自分たちは「外国の代理人」に政府に指定されたと明記していなかったページの中には、過去30年間でまとめた政治的抑圧の被害者の膨大なデータベースも含まれていた。
弁護人たちは、「外国の代理人」指定の不記載といったミスはすべて修正済みだとして、このような技術的ミスを理由に「メモリアル」ほど重要で尊敬されている組織を解散させるなど、違法行為とそれに対する罰則が不釣り合いだと述べた。
「インターナショナル・メモリアル」は判決後、最高裁の判断を欧州人権裁判所などで争う姿勢を示し、合法的な形で活動を続ける方法を探ると声明を出した。ロシア人は自分たちの過去を正直に振り返る必要があり、その必要性を誰も「解散」させることなどできないと、同団体は強調した。
ロシア司法省は、団体が社会的に重要だからと言って違法行為の言い訳にはならないと反論。ただし、検察官の論告はこの件について、単なる違法行為の取り締まり以上の意図をうかがわせる内容だった。
■「なぜ過去を恥じる必要があるのか」
アレクセイ・ザフィヤロフ検事は論告で、「インターナショナル・メモリアルは、なにより大祖国戦争(第2次世界大戦の意味)について歴史の記憶を歪曲(わいきょく)することに、ほぼ専心している」と主張し、同団体がソ連を「テロ国家」のように扱い虚偽のイメージを作り出していると非難した。
ソ連が世界の超大国だった時代をしばしば懐かしむプーチン大統領はかねて、第2次世界大戦でソ連がナチス・ドイツに勝利したことを頻繁に称揚してきた。これは多くのロシア人にとって、同時代のソ連が秘密裁判と強制収容所と銃殺隊の国でもあったことより、はるかに魅力的な過去の姿だ。
「勝者の子孫である我々は、なぜ栄光ある過去に誇りを抱くのではなく、過去を恥じて後悔する必要があるのか? そうさせるよう、おそらくメモリアルは誰かから金を受け取っている」と、検察官は法廷で述べた。
「メモリアル」に創設から関わっているオレグ・オルロフ理事は今回の判決に先立ち、BBCに対して、「当局が我々を選んだのは、我々が強力で有名で、連中をイライラさせるからだ」と話した。「今の当局は歴史を政治利用しているが、我々は連中の気に食わないことを言う。我々は、直視しづらい過去の厳しい出来事について語る。それが当局を不快にする」。
84歳のアレクセイ・ネステレンコさんにとっては、「メモリアル」への攻撃は、自分自身への個人攻撃に等しい。「この国の恥だ。みっともない」と政府を批判するネステレンコさんにとって、「メモリアル」は唯一無二のものだという。
ネステレンコさんの父は1937年、当時の最高指導者ヨシフ・スターリンによる大粛清の真っただ中で、「人民の敵」と呼ばれて逮捕された。父がその先どうなったのかネステレンコさんが後に知ることができたのは、「メモリアル」の支援のおかげだった。父は非公開裁判で裁かれ、銃殺され、他の大勢と一緒に埋められたのだった。
裁判資料によると、ネステレンコさんの父を調べた捜査官は後に、すべての罪状はでっちあげだったと認めている。
「当局は過去について沈黙したがるが、『メモリアル』はそれを許さない」とネステレンコさんは言いう。「過去を認めるのは本当につらい道のりで、そんなことはしたくない人が大勢いる」。
最高裁判決の後、複数のロシア人が「メモリアル」のおかげで判明した自分たちの家族に対する政治的抑圧の内容を、ソーシャルメディアに投稿している。
国際社会でも判決を批判する声が上がっている。ドイツ政府は、抑圧の被害者から声を奪うものだとして「理解しがたい」判決だと批判した。
ナチス・ドイツによるホロコーストの歴史を記録し伝えるアウシュヴィッツ博物館はツイッターに、「記憶を恐れる権力は、決して民主的な成熟を果たすことはできない」というピオトル・ツィヴィンスキ館長の言葉を載せた。
https://twitter.com/AuschwitzMuseum/status/1475797871614214149? s=20
アメリカのジョン・サリヴァン駐モスクワ大使は、「表現の自由を抑圧し、歴史を抹消しようとする悲劇的な動き」を非難した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、何百万人もの罪のない被害者の記憶を「踏みにじる」判決だと糾弾した。
■「歴史に手出しするな」
「メモリアル」は長年にわたり政府から圧力を受けてきたが、2014年のクリミア併合でロシア国内に熱烈な愛国心の大波が押し寄せたのを機に、その圧力は激しさを増した。
事務所の壁は落書きまみれになり、国営テレビはその活動を反ロシア的だと中傷した。2016年には「外国の代理人」と指定された。この「外国の代理人」という指定は、スターリン時代の「人民の敵」というレッテルを思わせる不穏な中傷だ。スターリン時代に「人民の敵」の烙印(らくいん)を押された人は、迫害されて粛清された。
今年の10月には、モスクワの「メモリアル」本部で行われた映画の上映会に大勢が集まると、ナショナリストの暴徒がこれを襲撃した。集まった人たちは、ウクライナで数百万人の犠牲を出したスターリン時代の飢饉(ききん)を描いた映画「Mr. Jones(邦題「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」)を見ようとしていた。これを襲った集団は壇上に上がり、観衆に向かって「ファシスト」、「我々の歴史に手を出すな」などと叫んだ。
「メモリアル」の姉妹団体で、現代の政治的抑圧や人権侵害を記録している「メモリアル人権センター」も、「外国の代理人」を取り締まる法律に違反したとして、解散されそうになっている。「メモリアル人権センター」に対する判決も、近く予定されている。
オルロフさんは、「メモリアル」と「メモリアル人権センター」への判決は、警告なのだろうと話す。「我々への攻撃は、ロシアの市民社会全体への強い合図のつもりなのだろう。連中は『見ろ! こいつらにこうできるなら、お前たち全員も解散させられるんだぞ』と言っているのだ」。
「もはやすべてを粛清して、これっきりにする。そういう時が来た」
■スターリンの恐怖政治
・1929年~1953年にかけてソ連の最高指導者だったスターリンの支配下、数千万人が犠牲になった
・被害者は移送、飢餓、強制集団化、処刑、強制収容などで命を落とした
・1937年~1938年の大粛清では推定75万人が殺害された
・数百万人が「グラーグ」と呼ばれる強制労働収容所に送られた
(BBCのモスクワ特派員、サラ・レインズフォード記者は今年8月、ロシア政府から「国家の脅威」と指定され、国外追放された)
何ともイミフな話であります。今のロシア連邦はソ連解体によって成立したと言うのに、それでいて、かくも旧来のソ連マンセーがまかり通ると言うのには理解ができない物です。
ソ連時代でも、ナポレオン戦争において、フランス軍の侵攻を阻止した将軍としてクトゥーゾフが礼賛されて、ドイツ相手のいくさにおいて、あの時の再現をしようと躍起になった物ですが、さりとてロマノフ帝政まで礼賛するはずもなく、今どきのロシアだって、ドイツ相手のいくさで勝った事と、ソ連体制とは別に考えても良いのでないでしょうか。
ともあれロシアでは民主主義が根付きにくく、どんな体制の元でも、独裁へと走りやすいのでしょうかねぇ。
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